映画『国宝』が、公開から3か月で興行収入133億円を突破したらしい。133億の札束ってどんななんだ。私の部屋に置き切れるのか。まったく想像がつかない。

それはさておき9月冒頭、自分もついに映画館に観に行った。

理由は2つ。まず、多くの人の心をとらえた理由を、体験を介して考えてみたくなったという好奇心だ。せっかくだったら、大きなスクリーンで観られるうちに観ておきたい。それから、いい加減インターネットでネタバレを踏みそうなのも恐れていた。

だったらもう、とっとと行っちゃおう。

そんな思いで、ずんだ餅を3個食べてから観に行った。

結果、評判どおりに3時間があっというまで滅茶苦茶おもしろかったのだが、その一方で「なんでここまで大大大大大大ヒットしたのだろう……?」という謎も残った。

いや、違うんだ。ヒットしたこと自体はぜんぜん納得なのである。

だって『悪人』『怒り』『流浪の月』の李相日監督の作品といわれたら、それだけですでに観に行きたい人がいるだろう。それに実力抜群すぎる若手、吉沢亮と横浜流星の出演作であるのも手堅い。歌舞伎が好きならそれだけで観に行く理由になりそうだし、原作者の吉田修一さんファンも観に行くかもしれない。そういった人たちを集めた時点ですでにそこそこの集客はあるだろうなっては想像できる。

ただ、この映画は、ヒットどころか、大大大大大大ヒットしている。133億だ。歴代の邦画実写ランキングでは、踊る大捜査線に次いで第2位だというじゃないか。公開から3か月以上が経過した平日深夜の回であっても満席だし、頻尿じゃなくとも不安に思う上映時間の長さにも関わらず、挑む人があとを経たない。

加えてなにより、実際観てみて驚いたのがこの映画が「わかりやすくはない」ことだ。

私自身が「血か才か?」みたいな古代からの視点に興味がなく、そこをとっぱらって観ていたから、ますます理解が進みにくかった……というのはあると思うんだが。それでも100人いたら、35人くらいは「ここ、どういう意味かはっきりとはわからんかったぞ」ってなりそうな気がする。

(ここ以降、なるべくネタバレを避けながら書いてみていますが内容に若干触れます)

まず、冒頭のシーン。ここはいったいどこなんだ。何がいま起こっているんだ。吉沢亮はどこにいるんだ。といった感じで状況を必死に把握している途中で物語が動き始めていた。その後も、「これは一体?」と考えているうちに物語がずんずん動く。動いていく。しかも、そこで飛ぶんか……? というところで話がびゅんっと飛ぶ。私の理解力が乏しいせいもあるんだろうけれど、それでも最易・親切設計とはいいがたい。観る側の思考力に委ねられている部分がけっこうある。いや、かなりある。

こういう感じ、観る側の想像力を信じてもらえてる気がして嬉しくはあるが、ヒットはともかく、大大大大大大ヒットできるものだとは思ってなかった。

私はここ数年、世の中を「わかりやすい説明が好き」「端的なものが好き」「簡潔であることが正義」なんだとざっくり見積もって、時に勝手に憂いでしまってもいた。

わかりやすさを探究していった先で、こぼれてしまうことがあるんじゃないか。そう不安にかられていたのである。でも、わかりやすさを求める思考が世の全部ではないんだろう。いや、書いてみて改めてそりゃそうだろうっては思うのだが。

「わからない」を抱えられる人の人口は、多数派ではないとしても、私が想定しているよりもずっと存在しているのではないか。もしかして、わからなさを抱えられてないのはむしろ、私のほうなんじゃ。

現にこの映画を観て、映画ではわからなかった部分を知るために小説を読み始めた人もいるという。上下巻なので読み応えがある。それでも、この物語の網目をじっくり見つめようとしている人は一定数いるのである。

わかりにくさを味わいたい気持ち、わかりにくいことを知ろうとする気持ちは、どこかにちゃんと存在しているのだ。この波のうねりのなかに。

なお、ある評論には、『国宝』について「意外なほどシンプルで観やすく、誰もが素直に感動できる仕上がり」とあって、ええええすみません全然そう思わなかった!私、あなたの想定する「誰もが」のなかに当てはまらないじゃん!!!!!って衝撃だったのだが。映画を見慣れている人からしたら、相対的にはわかりにくくないのかもしれない。

ちなみに『国宝 なぜヒット』でググって、1ページ目に出てきた記事を読んでみたのだが、そのなかで一番おもしろかったのが、東宝の人たちと制作幹事さんが出てくるアドタイのインタビュー記事。さすがにここまでの大ヒットになるのは東宝サイドも予想してなかったらしい。そうなんだ!

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