家にいるとつい昼寝してしまうので、ファミレスに作業しに出かけたら、神妙な面持ちで土地の売却について話している人たちの隣に座ってしまった。なんとなく座ったら、横の空気が、重要な会議をしているみたいな緊張感に包まれていたのだ。
わたしはいい。ぜんぜん構わない。むしろ、普段聞く機会の少ないジャンルの話に興味津々で、こうやってやりとりがなされるのか!と聞き入ってしまった。だけど、神妙な顔になるほど大事な話なのに、赤の他人がこんなにも聞き入ってしまってよかったのかしらと不安には思った。
どうやら彼らは不動産業者を介さずに、直接取引する方向で話を進めているようだった。そのなかで、双方の思う売買金額に大きな乖離があったらしい。うっすら聞こえてきた金額はかなりの額で、彼らが「大きな乖離がありますね」と口にするたびに、そうですね仰るとおりです、と心の中で頷いてしまうくらいの額だった。
とはいえ取引を中止するのではなく、譲歩しあおうと考えているらしい。
そんな彼らの会話は、相手の意見をぶしつけに否定することはなく、そのうえで己の意見も明確に伝えるものだった。自分の主張を伝える際には、その根拠として、信頼のおけそうなデータや第三者の意見などを論理立てて伝える。その上でそっと、ゆっくりと自分の考えを伝えるように心がけていて、声色はつねに穏やかだった。
相手の逆鱗に触れることのないよう、心を配りに配り、言葉を選んで展開されてく巨額の交渉。
成熟した大人の会話だと思った。
まさか、ファミレスでうどんをすすりながらこういう話を聞いて、こんな感想を抱く日が来るとは思わなかったけど。無事に折り合いがつくといいなと思う。
